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「生産性」

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「生産性」
伊賀泰代

久々に面白い本に出会った。
線をたくさん引いてしまった。

著者は漠然としたことを言語化する力が素晴らしい。




「数十年前、私が社会人として働き始めた頃、日本企業の多くは売上高や市場シェアの大きさを競い合っていました。当時はそれらが、業界のトップ企業を決める指標だったからです。しかし、今は、その基準も大きく変わりました。海外の機関投資家が増えたため、多くの企業が利益率やROE(資本利益率)など率の数字を、経営指標として重視しています」
「そもそも『成長する』とは『生産性が上がる』ということに他なりません」

「しかしこの方法では、一時的に成果を上げることはできても、遠からず限界が訪れます。部下はどこかの時点で『これ以上は無理』と感じ始めるし、管理職が自分の時間を投入して穴埋めを続けていたら、心か体のいずれかを壊してしまいます。労働力の追加投入によって成果を上げ続けるのは、持続可能な方法ではないのです」

「どこの分野でも同じですが、今の時代、継続的に右肩上がりの目標を掲げられる分野は多くありません。それなのに毎年毎年、昨年より高い成果目標を立てろと求められたら、誰だって『今年は少し抑え気味の目標にしておこう』と考え始めるでしょう。これが『目標を低めに立てたほうが得になる制度』を生む理由です」

「資格取得や語学研修などスキルを高めるため、“お勉強”に励む社員がいくら増えても、必ずしもその努力が仕事の質や成果の高さに結びつくわけではありません」

「次が『より効率的な方法はないか?自動化できないのか?』ということです」

「ネットメディアの運営やモバイル分野の広告業を営むサイバーエージェントでは、2015年、藤田晋社長の下で『捨てる会議』を開催し、32件の事業や社内慣行を廃止したそうです」

「最悪なのは誰かが休みを取ることになったとき、その人の仕事をそのまま“他の誰かに適当に割り振る”ことです。これは、『残りの四人に25%長い時間働いてもらって問題を解決しよう』という方法ですが、これでは残ったメンバーはたまりません。働くモチベーションや組織へのコミットにも悪影響が出てきてしまうでしょう」

「『あの人にしかできない仕事』は、当人の高い価値につながっていることも多いのですが、一方ではその人は、『自分の仕事を伝達可能な形に要素分解し、他の人にもできるようにすることで、組織の生産性を高めるという貢献ができていない人』ともいえ、組織としては、その人の急な病気や退職、休暇取得の際の大きなリスクを抱えてしまいます」

「冒頭の化粧品メーカーの例でもわかるように、育児や介護を担う社員だけに休職や柔軟な働き方を認め、そこから生じる負担をすべて『介護も育児も担当していない社員』に移転する方法では、組織内の不公平感も大きくなるし、仕事もどこかで回らなくなってしまいます」

「これからは企業に求められるのは、すべての人が、希望するワークスタイルを実現できるよう、支援することです。時短勤務や在宅勤務も子育てや介護中の社員だけでなく、あらゆる社員に認められる制度とするのが目指すべき方向です」

「もしくは、売上げを伸ばす方法として、社員をより長く働かせること以外の手段を思いつかない(生産性の意識を欠いた)前時代的な経営者の意識や、それ以外の方法では付加価値を生み出せない古いビジネスモデルこそが、解くべき課題なのです」
「少し考えれば誰でもわかることですが、生産性を上げないまま労働時間を短縮すると、企業は提供商品やサービスの価値が低下し、売上げが下がります」

「長らく問題視されながら根本的な解決がなされてこなかった都市部の通勤問題についても、今後はより真剣な取り組みが始まるでしょう。現在、東京圏の平均通勤時間は往復一時間四十二分で、一週間分の通勤時間で一日分以上の労働時間が捻出できます。このような生産性の低い時間を多くの人が浪費しているのは、個人にとっても企業にとっても、そして社会にとっても無駄なことです」

「今、政府は人口減少時代への対応、企業は国際競争力の維持強化、そして個人はワークライフバランスの実現という課題を抱えています。実はこの三つの問題すべてを解決できるのが『生産性の向上』です」

「そこでは、『仕事ができる人』とは、『生産性の高い人』のことであり、『成長する』と『生産性が高くなる』ということを意味していました。そして人材育成の目的とは、個々人の生産性を少しでも高めるために支援することだったのです」

by knglh223rd | 2017-06-21 23:53 | Book


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